diary / 2025年2月16日

2025年2月16日の日記

2025年2月16日の日記

5分 · 2678字diary

昨日、恋人と別れた。 夜通し説得されるかと思っていたけれど、結果的には一晩かけた話し合いの末、彼女がすべてを諦めるように納得してくれた。 「別れたい」という選択を突きつけた自分が、不甲斐なくて申し訳なくて、彼女が泣くのを見ながら僕も子どものように泣いた。何度も謝りつづけた。

2 彼女の新居を出て、古びたアパートのドアを閉めると、向こうから嗚咽がいつまでも漏れてくるのがわかった。廊下全体に、彼女の泣き声だけがやけに響く。だが、後ろ髪を引かれる思いはなかった。 僕は足早に階段を降りていった。あんなに悩み、あんなに苦しんだ末の結論なのに、最後の最後で自分が泣きじゃくるなんて思いもしなかった。泣くほど彼女を傷つけているという事実が、やりきれなかったのだろう。 それでも、これで僕は自由になった。ずっと世話を焼いたり、焼かれたりする関係だった彼女から離れた今、これからどうすればいいのかは皆目見当がつかない。それでもやっていくしかない。

3 そして今日。名古屋から友人が来るというので、夕方から会うことになった。正確には、2年前に台湾で、1年前に名古屋で会って以来だから、今回が三度目の再会というわけだ。はたして「友人」と呼んでいいのかは微妙だが、少なくとも名前と顔が一致する仲ではある。 待ち合わせ場所は代官山。とくにやりたいこともなかったから、ふたりでぶらぶら歩いて渋谷へ向かい、ナチュラルワインの店に入ることにした。

4 テーブルに座り、「実は昨日、恋人と別れてきたんだ」と切り出すと、彼女は30秒ほど唖然としていた。それから急に人差し指で自分を指し、どこか得意げな顔で言った。 「ってことは、今日私に会えてよかったでしょ?」 冗談めかしているのか本気なのか、いまいち分からない。ただ、彼女も年末に恋人と別れたらしい。

5 聞けば、ある日突然その元恋人から電話がかかってきたのだが、受話器の向こうからは見知らぬ女性の声がしたという。その女性もまた、彼と同棲している「恋人」だった。つまり二股。 「ま、そういうこともあるよね」 そう肩をすくめて笑う彼女は、まるでよくある話を語るみたいだった。僕らはその下世話なトラブルでひとしきり盛り上がり、千円のチャージに千円のビールという、高いだけのバーへ移動した。そこには巨大なスピーカーが鎮座し、上質な音楽が黙々と流れている。

6 ビールをすすりながら、さっきまでの熱っぽい会話が嘘のように静かになった。ちょっとした共感で会話が盛り上がるのは簡単だが、その後に訪れる沈黙は意外と長く、重い。 僕らはそれぞれの別れ話を抱え、しかもそれをすでに笑い話めかして互いに共有している。だけど、飲み込んでいない感情がまだ残っているのをお互いなんとなく感じていたのかもしれない。 このとき、僕がやっと「自由」と呼べる状態になったことを思い出した。社会人になってからずっと、僕は彼女に振り回されていたようで、実は僕も同じように彼女を振り回していたのかもしれない。喪失感と開放感が入り混じり、頭のなかが落ち着かない。

7 「Tinder奮闘記東京篇を期待してた人には悪いけど、もうちょっと待っててほしい」 そう心の中で読者に謝ってみても、まだ僕自身が次へ進む心構えなんてできていないのが正直なところだ。一つの恋が終わって、たまたま同じタイミングで再会した名古屋の彼女もまた、新たな一歩を踏み出せているのかどうか。 こんなふうに誰かと語り合っては、また黙りこくってビールを飲む。そのくりかえしこそが、僕の自由の入り口になるのかもしれない。とりあえず、そう信じて店を出ることにした。

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夕闇迫る頃、名古屋の旧友が訪ねて来るとの知らせが届いた。待ち合わせは、黄昏に染まり始めた街角。彼女との縁は、二年前、異国の地、台湾で始まった。昨年は名古屋、彼女の故郷で再会を果たし、今回は三度目の巡り合わせとなる。果たして彼女を「旧友」と呼ぶべきか、今もって確信は持てぬ。しかし、互いの面影と名は、朧げな記憶の淵から、辛うじて引き上げられる程度には、繋がっていると言えよう。

待ち合わせ場所は代官山。格別な目的があったわけではない。ただ、緩やかな坂道を、足の赴くままに渋谷へと歩いた。辿り着いたのは、ひっそりと佇む、ナチュラルワインの店だった。

「実は昨日、恋人と別れたんだ」と、静かに告げた。彼女は、時が止まったかのように、睫毛を伏せた。数瞬の沈黙の後、細い指先で自らを指し、「それならば、今日、私と会えたのは、寧ろ幸運だったのかもしれないわね」と、どこか勝ち誇った響きを含ませて言った。

彼女もまた、昨年の暮れに、愛の終わりを迎えたという。元恋人からの、唐突な電話。耳に届いたのは、聞き慣れない女の声。その声の主もまた、彼の恋人であり、共に生活を共にしていたという。

「二股をかけられていた、というわけ」と、彼女は肩を小さく竦めてみせた。まるで、それが世の常であるかのように。我々は、その滑稽な顛末を肴に、暫し言葉の戯れに興じた後、席を移すことにした。チャージだけで千円、ビールもまた千円という、過剰な音響設備を備えた店へ。法外な値段のビールを、贅沢な音響に身を委ねながら、ただ静かに喉を潤した。

そして、私もまた、昨日、愛に訣別を告げた。彼女は容易には頷かないだろうと予想していたが、夜を徹するまでもない、僅かな言葉の応酬の末、遂には諦念にも似た静けさで、小さく頷いた。

別れ話の間、絶え間なく涙を零す彼女の姿を前に、私の心もまた、深く濡れた。「別離」という選択を下した己の不明瞭さ、そして、彼女に対する拭いきれない申し訳なさ。幼子のように咽びながら、謝罪の言葉を繰り返すばかりだった。

彼女の新しい住まいを後にし、背後で扉が閉ざされた後も、彼女の慟哭は、古びたアパートの廊下に、いつまでも木霊していた。しかし、振り返るべき衝動は、微塵も湧き上がらなかった。私は、唯、帰路についた。

斯くして、私は形式上、自由の身となった。社会人として歳月を重ねるうちに、いつしか彼女の生活を支え、また、彼女に寄り縋る、奇妙な共存関係を築いていた。これから何処へ向かうべきか、皆目見当もつかない。だが、如何にかして、この不確かな未来を歩んでいくしかないのだろう。x Tinder奮闘記東京篇を心待ちにしている読者諸君には、些かばかりの失望を与えるかもしれないが、今暫く、 पेजを繰るのを待っていて頂きたい。x

Cosmic Dance / 2025年2月16日
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